インド最北の天空の秘境「ラダック」で味わった素朴で美味しい家庭料理【持続可能な暮らしを考える旅】
2022年9月17日 08:00
インドの旧ジャンムー・カシミール州東部に位置する「ラダック地方」。ココには、ほかのインドの街や村とは一線を画する荒涼とした光景が広がり、チベット仏教をはじめとするラダック独自の文化が根付いています。そんなラダックにあるシェイ村にホームステイ。素朴でどこか懐かしい味わいの家庭料理を堪能してきました。
インドの首都デリーから飛行機で約1時間半のラダックは、ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈に囲まれた、平均標高3500メートルを超える山岳地です。そこにいくつもの町や村が点在しています。ラダックの玄関口であり、中心の街「レー」は、想像以上に都会。急速な近代化の波に押され、ホテルやレストラン、カフェ、お土産屋、旅行代理店などが軒を連ねています。
また、ラダックはチベット文化圏です。中国のチベット自治区よりもチベットらしい文化が残っていると言われています。実際には、チベット文化はもちろん、牛やロバなどが自由に闊歩するヒンディー文化、アザーンが流れるイスラム文化が融合する摩訶不思議な場所でした。
さらにレーの郊外のチョグラムサルには、ほぼ毎夏、チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世が滞在する邸宅と広場があり、数日間にわたり法話を行っています。
しかし、ラダックはパキスタン・中国と隣接する特殊な場所であり、軍事的な理由で、1974年に外国人に開放されるまでは、閉ざされた場所でした。そのため、今もなお通貨価値を基盤としない、ほぼ自給自足の循環型の持続可能な生活が残っています。
ラダックではホームステイが可能です。筆者はレーから車で30分ほどの場所にあるシェイ村にホームステイ。まずはホームステイ先のお母さんが、バター茶を出してくれました。「バター茶」はチベット文化圏でよく飲まれているお茶で、発酵バターと塩をチャイに加えて撹拌した飲み物です。
上の画像の道具でバター茶を作ります。
お味の方は、バターのコクを感じるややソルティなチャイといった感じでしょうか。ちょっとクセがあるため、苦手な人は苦手かもしれませんが、著者は最初から3杯もおかわりするほど、お気に入りの飲み物に。
こちらはチャパティ。お母さんが1枚1枚、この日の朝、石の上で焼いたもので、噛み締めるたびに旨味があふれる絶品!
上の画像は朝ご飯。お米、ダル(豆カレー)、野菜炒め、茹で卵です。ダルは「本当にカレー?」と思うほど、スパイスを感じない、やさしい味わい。マイルドな塩気のあるスープに近い料理だと言えます。また、野菜炒めは、ホームステイしたお宅の庭でとれたカリフラワーやニンジンといった野菜を使っていて、新鮮で美味。ご飯との相性も抜群でした。
こちらは自家製ヨーグルト。臭みを一切感じないヨーグルトで、野菜炒めに混ぜて、味変もできます。
滞在中に甘いミルクティーもいただきました。このとき、ダライ・ラマ14世が日本の「午後の紅茶ミルクティー」を好んで飲んでいたのを思い出し、妙に納得。ラダックの甘いミルクティーと「午後の紅茶ミルクティー」の味が、そっくりなのです!
ラダック料理は、強いスパイスを使っておらず、ベジ中心でヘルシーなのもあり、日本人の口に合います。アルチの「チョスコル ゴンパ」近くのレストランで食べたモモ(餃子)や麺料理(トゥクパ)も薄味で、食べやすく、美味しかったです。ベジメニューのバリエーションが豊富なので、ベジタリアンにとっては天国のような場所かもしれません。
このホームステイで持続可能な生活の一部を垣間見ることができました。まずこちらの家には、コンポストトイレ(青空トイレ)が設置されています。乾燥した気候のラダックでは、臭いもすぐに消えるため、人間の排泄物を使い、畑の肥料などにしているのです。
また、家の敷地の一角で牛を飼っています。この牛の乳から乳製品などを手作りしています。牛のフンは乾燥させ、長いラダックの冬のストーブの燃料として使用。さらに驚くことに、この家の水道水は飲めます。海外では基本的に水道水は飲めません。ましてやインドなら、お腹をくだす危険性大です。ですが、この家の水道水は冷たく、無味無臭。空のペットボトルに入れてゴクゴクと飲んでもお腹を壊すことはありませんでした。
ちなみに紙類などのゴミは自宅で燃やしてしまうそうです。ホームステイをしている間に出たゴミは、トイレットペーパーやティッシュペーパーなど紙類のみでした。
住民・動物・自然が共同体として支え合う持続可能な生活は、かつて日本でも行われていた生活です。シェイ村でのホームステイを通して、日本に帰国してからも可能な限りゴミを出さない生活を送りたいと強く思うようになりました。
そんなラダックも近代化やグローバル化により、変わりつつあります。山間部で羊飼いなどをして生活していた若者が、都会での生活に憧れて、レーに移住するケースも多いとか。また、道端には、ペットボトルやビニールなどの大量のゴミが転がっていました。インダス川とザンスカール川が交わる絶景ポイントにも、崖にゴミが散乱しており、複雑な気分に。
その一方で、商店でペットボトル飲料を売らない、という活動が行われていると聞き、少し希望が持てました。
資源が乏しい、厳しい自然の中で、工夫を重ねながら、ほぼ循環型の自給自足の生活を営んできたラダックの人々。食糧危機の到来が予測されている今、その生活は、日本で生きる私たちの「近未来的」な生き方の参考にもなります。
加えて、化学肥料を使わない食材を使った料理は格別で、電磁波の少ない村での暮らしは、私たち現代人に真の安らぎをもたらしてくれます。地球に住む一員として、本当に美味しい食事とは? SDGsとは? 幸せな生活とは? など多くのことを考えさせられたラダックの旅でした。
素朴でやさしい味のラダック家庭料理
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■ラダックとはどのような場所?
インドの首都デリーから飛行機で約1時間半のラダックは、ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈に囲まれた、平均標高3500メートルを超える山岳地です。そこにいくつもの町や村が点在しています。ラダックの玄関口であり、中心の街「レー」は、想像以上に都会。急速な近代化の波に押され、ホテルやレストラン、カフェ、お土産屋、旅行代理店などが軒を連ねています。
また、ラダックはチベット文化圏です。中国のチベット自治区よりもチベットらしい文化が残っていると言われています。実際には、チベット文化はもちろん、牛やロバなどが自由に闊歩するヒンディー文化、アザーンが流れるイスラム文化が融合する摩訶不思議な場所でした。
さらにレーの郊外のチョグラムサルには、ほぼ毎夏、チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世が滞在する邸宅と広場があり、数日間にわたり法話を行っています。
しかし、ラダックはパキスタン・中国と隣接する特殊な場所であり、軍事的な理由で、1974年に外国人に開放されるまでは、閉ざされた場所でした。そのため、今もなお通貨価値を基盤としない、ほぼ自給自足の循環型の持続可能な生活が残っています。
■素朴でどこか懐かしい味わい、ラダックの家庭料理
バター茶。ソルティミルクティーとも言われている
ラダックではホームステイが可能です。筆者はレーから車で30分ほどの場所にあるシェイ村にホームステイ。まずはホームステイ先のお母さんが、バター茶を出してくれました。「バター茶」はチベット文化圏でよく飲まれているお茶で、発酵バターと塩をチャイに加えて撹拌した飲み物です。
バター茶を作る道具
上の画像の道具でバター茶を作ります。
お味の方は、バターのコクを感じるややソルティなチャイといった感じでしょうか。ちょっとクセがあるため、苦手な人は苦手かもしれませんが、著者は最初から3杯もおかわりするほど、お気に入りの飲み物に。
お母さんが焼いてくれたチャパティ
こちらはチャパティ。お母さんが1枚1枚、この日の朝、石の上で焼いたもので、噛み締めるたびに旨味があふれる絶品!
素朴でやさしい味のラダック家庭料理
上の画像は朝ご飯。お米、ダル(豆カレー)、野菜炒め、茹で卵です。ダルは「本当にカレー?」と思うほど、スパイスを感じない、やさしい味わい。マイルドな塩気のあるスープに近い料理だと言えます。また、野菜炒めは、ホームステイしたお宅の庭でとれたカリフラワーやニンジンといった野菜を使っていて、新鮮で美味。ご飯との相性も抜群でした。
臭みのないさっぱりとしたヨーグルト
こちらは自家製ヨーグルト。臭みを一切感じないヨーグルトで、野菜炒めに混ぜて、味変もできます。
甘いミルクティーとビスケット
滞在中に甘いミルクティーもいただきました。このとき、ダライ・ラマ14世が日本の「午後の紅茶ミルクティー」を好んで飲んでいたのを思い出し、妙に納得。ラダックの甘いミルクティーと「午後の紅茶ミルクティー」の味が、そっくりなのです!
モモ
ラダック料理は、強いスパイスを使っておらず、ベジ中心でヘルシーなのもあり、日本人の口に合います。アルチの「チョスコル ゴンパ」近くのレストランで食べたモモ(餃子)や麺料理(トゥクパ)も薄味で、食べやすく、美味しかったです。ベジメニューのバリエーションが豊富なので、ベジタリアンにとっては天国のような場所かもしれません。
■シェイ村のお母さんから学んだ持続可能な生活
ホームステイしたお宅
このホームステイで持続可能な生活の一部を垣間見ることができました。まずこちらの家には、コンポストトイレ(青空トイレ)が設置されています。乾燥した気候のラダックでは、臭いもすぐに消えるため、人間の排泄物を使い、畑の肥料などにしているのです。
日課である牛の散歩をするお母さん
また、家の敷地の一角で牛を飼っています。この牛の乳から乳製品などを手作りしています。牛のフンは乾燥させ、長いラダックの冬のストーブの燃料として使用。さらに驚くことに、この家の水道水は飲めます。海外では基本的に水道水は飲めません。ましてやインドなら、お腹をくだす危険性大です。ですが、この家の水道水は冷たく、無味無臭。空のペットボトルに入れてゴクゴクと飲んでもお腹を壊すことはありませんでした。
ちなみに紙類などのゴミは自宅で燃やしてしまうそうです。ホームステイをしている間に出たゴミは、トイレットペーパーやティッシュペーパーなど紙類のみでした。
ホームステイしたお宅の畑
住民・動物・自然が共同体として支え合う持続可能な生活は、かつて日本でも行われていた生活です。シェイ村でのホームステイを通して、日本に帰国してからも可能な限りゴミを出さない生活を送りたいと強く思うようになりました。
■変わりつつあるラダック
インダス川とザンスカール川の合流点
そんなラダックも近代化やグローバル化により、変わりつつあります。山間部で羊飼いなどをして生活していた若者が、都会での生活に憧れて、レーに移住するケースも多いとか。また、道端には、ペットボトルやビニールなどの大量のゴミが転がっていました。インダス川とザンスカール川が交わる絶景ポイントにも、崖にゴミが散乱しており、複雑な気分に。
その一方で、商店でペットボトル飲料を売らない、という活動が行われていると聞き、少し希望が持てました。
資源が乏しい、厳しい自然の中で、工夫を重ねながら、ほぼ循環型の自給自足の生活を営んできたラダックの人々。食糧危機の到来が予測されている今、その生活は、日本で生きる私たちの「近未来的」な生き方の参考にもなります。
加えて、化学肥料を使わない食材を使った料理は格別で、電磁波の少ない村での暮らしは、私たち現代人に真の安らぎをもたらしてくれます。地球に住む一員として、本当に美味しい食事とは? SDGsとは? 幸せな生活とは? など多くのことを考えさせられたラダックの旅でした。
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