フランス帰りの欧風カレー【ソムリエが教えるワインと簡単リッチ飯 vol.7】
2021年1月21日 08:00
僕たちはどこから来てどこへ向かうのか。
何を食べて、何を思うのか。
誰といて、何をするのか。
15年前の当時、約1ヶ月ほど一緒に働いた間に激しく意気投合し、強烈に影響を受けた藤井将之シェフ。パリ帰りでたくさんの面白い話と、こっそり密輸してきたバスクのチョリソーを小出しにしてくる、ずんぐりむっくりの髭面で、八重歯がチャーミングな天才料理人。この日も深夜にワインを飲みながら料理の話は続いた。
「たかちゃん(私の事)、もともとフランスには今のようなおしゃれなフレンチなんて無かったんだよ。そもそもが領地を奪い合う野蛮な国で、食事だってローストがほとんど。それも一度にテーブルに出され、食事だって手掴みで食べていたんだ。それでね…」
21歳で美術学校を出てから、外国車の内装皮革のレストレーションやカラーコーディネートの職人を5年ほど勤める。イタリア好きの社長の元、ワンオフのアーティスティックな仕事は集中力と専門技術を要し、常に作品であり物を作る悦びは心の底から「これが天職だ!」と感じさせてくれた。
幼少から工作が好きで、サランラップの芯やダンボールに萌えているような子供だったから60年代~80年代の歴史ある車から内装パーツをバラシてはレザーを剥がし、型を取り、時には復元させ、時には色を変え、また車に戻す。それはまさに当時の職人とのモノを通したコミュニケーションであり、毎日が学びと感動と鳥肌の連続であった。
私にとっては、工作も、レザー加工も、料理も何かを作り出すことこそが、同じ喜びを味わえる一つの方法で無心になれ、時間を忘れ、無条件に楽しいひと時を生み出してくれる。
そこで「シートキット」なるものが流通し始めた。車から外したシートをただ脱がせては、中国製の縫製の歪んだシートカバーを着せて行く作業。そこには偉大な職人達とのコミュニケーションはなく、早さだけが正義であり、とにかく数を求められる仕事になってしまったのだ。
なんとまあ「早い」「安い」「うまい」は飲食店に限った事ではないようだ。「生産性」と「低コスト」に「ニーズ」が加われば、商売の方程式は解けてゆく。儲けがそこにあれば経営者は背に腹はかえられない。
しばらく何もやる気が起きなかった。
ブラブラしていると友人たちから喝をいただく。お前なんか金を貯めてイタリアでもどこでも行ってしまえと。俺たちには継がなきゃいけない親の会社がある。「そこまで好きになれるものに出会えたお前が羨ましい」と言われた。自分の人生を無駄にするなと本気で怒られた。それで目が覚めた。
だが次に就いたのが営業職だった。給料が高く、お金を貯めて本気でイタリアでに行こうと思ったのだ。テレアポで固定給なしの完全フルコミッション。上司に可愛がられ徹底的に「お客様の立場で物事を考える」を叩き込まれる。これは前職のブロックス時代にマネージャーとして大いに役に立った。売る物が変わっても売れるのが本当の営業だと教えられた。
半年くらいで部下が付き課長になった。本社が大阪にあったその会社は翌年東京に支店を作ると言う。すごいタイミングで上司が居なくなり、支店長になってしまう。ガムシャラに支店を守った。いつしかイタリアの夢は消えていた。
物を売る仕事に情熱を傾けて来たものの、再び物を作る悦びを味わいたくなった。
「たかちゃん、それでね、どこからフレンチが発展したかと言うとね、実はイタリアなんだよ。メディチ家のカトリーヌがフランスのアンリ2世のところに嫁ぐことになり、イタリアンの料理人を引き連れてフランスにやって来たんだ。その時に料理と一緒に、白い皿もフォークもテーブルマナーも待ち込まれたんだよ。フレンチの起源はイタリアンなんだよ」
その夜の話は衝撃だった。また「此処に戻って来られた」と思った。モノづくりの快感の毎日に戻れる気がしたのだ。個人的なルネッサンスに思わず涙が溢れてしまった。
ひと月ほどで別れの時は来てしまった。マニアックで濃密で、心躍る料理の話を肴に、ワインを飲んだあの頃が懐かしい。
その後、藤井シェフは恵比寿の「ギャマン」に。私は藤井シェフの口利きで「ヴァトゥ」に行き、5年後再び「ギャマン」に誘われる。もしも出会っていなかったなら、今もこうして料理の世界に携わっていなかったと確信している。もちろんフレンチにも飛び込んでいなかっただろう。
「たかちゃん、イタリアンが好きなら、料理が好きなら、一度はフレンチやるべきだよ。フレンチ本当に楽しいから」
私もしばらくは「ヨーロッパ風カレー」のことだと思っていたのだがインドカレーに相対する「ヨーロッパのそれ」ではなかったのである。なんなのか「欧風カレー」。実はビックリ、日本発祥のカレーなのである。大きな「へーっ」があちこちから聞こえる。
そうなのだ。カレーは奥が深いのである。
そもそもインドカレーという概念すらおかしいのだ。全ての料理にスパイスが使われており、いわゆる「カレー」を作っている意識は一切ないのである。
ターバンを巻いてヒゲの生えたインド人は、「イメージ戦略」の賜物である。まんまと嵌められているのだ。もはやその方がカレーが美味しそうに見えてしまうから不思議だ。さもすると、笛の音とともにツボからヘビが出てくる所を想像してしまうのは、私だけであろうか?あぁ、「ターバンと壺とヘビ」で無性にカレーが食べたくなって来てしまった…。
本日は、まあまあズラズラと、というかダラダラと前述に自己紹介コラムを書いてしまったので「カレーの深掘り」はまた次回にするが、インドとイギリスと日本における「歴史的な外交と栄養学的な面を持った経済的な話」が詰まっているのである。あぁー語りたい。
とはいえ至極真面目に「フレンチへの牽引者」を辿って今回思い出したことは、東京神田の老舗カレー店「ボンディ」の創業者、村田紘一氏。絵画と彫刻の勉強の為にフランスに渡り、現地のレストランでのアルバイトと共に4年間を過ごし、帰国後に絵でも彫刻でもなく「料理」を始めたところにいたく共感した。そして「ボンディ」が通っていた芸術学校への通学路にあったことも感慨深い。村田さんを通して分かったのが、おそらく「フォン・ド・ヴォー」をベースに取ったであろうデミグラスをチャツネと共にカレーに加えて考案したのが「欧風カレー」であること。
これが今回の最大のポイントであるのであります。
「フォン」いわゆる出汁に関しては今回「コンソメ」を取る部位である「スネ肉」を使い豊富なコラーゲンと共に「旨味」も引き出しつつ、出汁としてしっかりと香味野菜も使うことで、主婦の皆様には怒られてしまいそうな工程を交えつつ、フレンチっぽいことが出来たらと思う所存でございます。
母親は料理好きの書道家であり、おやつも手作りするような人で、包丁も火も「怪我をして怖さを覚えなさい」との教育でした。父親はエンジニアで、壊れた家具や家電をサクッとバラしてはサクッと直してしまう人であり土曜日の料理人です。焼きそばとラーメン率高し。
父も幼少からカッターナイフを握らせてくれて、持ち方も怪我をしない切り方も教わって来ました。そんな環境で育って来たわけですから、我が人生には多大な影響を与えてくれます。
初めて1人で料理をしたのは小学4年でした。
その時より究極のテーマはいつもカレーで常に進化を繰り返しておりますが、現時点での「変態ソムリエ佐藤のカレー」としてご理解頂けましたら幸いでございます。
今後も精進し進化をして参ります。
<材料 4皿分>
カレールー「ハウス ザ・カリー」中辛(こちらはお好みで) 1箱
デミグラス「SB ディナー・ビーフシチュー」 約半量(こちらもお好みで)
牛スネ肉 650g
塩 適量
黒コショウ 適量
サラダ油 大さじ1
<煮込み用ミルポワとブーケガルニ>
ニンジン 1本
セロリ 1本
ローリエ 2枚
タイム 3本
パセリ(茎) 3本
ネギ(青い部分) 3本分
ホワイトペッパー(ホール:あれば) 3粒
<飴色玉ネギ>
ニンニク 1片
ショウガ 1片
玉ネギ(小) 4個
バター 25g
塩 少々
水 約200ml
水 850ml
赤ワイン(バートン・ヴィンヤーズ2019 メタル ザ・ブラック シラーズ) 300ml
水煮トマト(缶) 1缶
ケチャップ 30g
ソース 30g
ハウス リンゴとハチミツペースト 1袋(40g)
ハウス マンゴーチャツネ(ペースト) 1袋(40g)
ハウス ブイヨンペースト 1袋(30g)
トリュフ油(白) 小さじ1
<トッピングのお野菜(「野菜のバターソテー」2人分)>
ジャガイモ(小:下茹でしたもの) 1個
芽キャベツ 1個
赤パプリカ 少々
カボチャ(スライス) 2枚
レンコン(スライス) 2枚
バター 30g
塩コショウ 適量
<紫キャベツのマリネ>
紫キャベツ 1/4個
塩 適量
フランボワーズビネガー(または赤ワインビネガー) 適量
ご飯(炊きたて) 4皿分
・本日の主役「玉ネギ」はペティナイフの先で根の部分をくりぬきます。
そして包丁の先で芯の部分をえぐり出します。芯の部分は成分が強いので玉ネギにしろニンニクにしろ、香りが強く雑味になりやすいです。また胸焼けの原因にもなるそうなので丁寧に取り除きましょう。この段階で処理しておくと、半分に切ってから包丁を入れるよりも少しだけ手間が省けるのと、根っこと一緒にV字に刃を入れるよりも玉ネギがバラけにくい利点があります。みじん切りにする際に根を残すとき以外はこの方法がおすすめです。皮を剥き後の玉ネギが丸ごと使えるようになります。今回は縦半分にカットしたらひたすら薄くスライスしてください。
小さい玉ネギにした理由は、女性の力でも小さめの包丁でも切りやすいからです。4個はなかなかボリュームあります。涙が止まりませんよw。今回の主役は「飴色玉ネギ」です!頑張って!
・セロリとニンジンは煮込み用の香味野菜としての活躍です。ニンジンは皮を剥いて頭を落とし、ボディの真ん中あたりまで十字に切り込みを入れます。こうする事で出汁が出やすくなります。セロリは鍋に入るほどの長さにカット。ブーケガルニも纏めておくとお料理しやすいですよ。今回は煮込んだ後でお肉を取り出し、フォンを一度濾しますのでペーパータオルで巻いたり糸で縛ったりしなくても良いです。縛ればそれだけ取り出しやすいですが時間短縮にて。
・ワインやお水なども、キッチンにスペースがあり大きめの計量カップやボウルなどがあれば、あらかじめ計量しておくことをオススメします。火を使った調理中に計量しなくても済みますのでスムーズです。ケチャップやソースもしかり。今回は工程をお見せするためにペースト3種の写真もお載せしますが、ケチャップ等と一緒にまとめておくと便利です。いちいちパッケージを開けることになりますので。
・トッピングの野菜は基本的に有るものでも構いません。用意するとすれば「色味」に着目すると盛り付けが楽しめます。赤パプリカは味的にも色的にもオススメ。カボチャもオレンジが綺麗ですしカレーとの相性も良いです。意外と「映える」のがレンコンです。あの穴の開いたデザインは特徴的です。蓮根のきんぴらにしようと買ってきた物が冷蔵庫にあれば端を少々頂いちゃうか、またはその逆で。今回は使いませんでしたがお茄子さんも最高ですね。ジャガイモであれば事前に下茹でしておきましょう。いきなり生からソテーだと時間がかかります。何度か下茹でレシピを過去に載せてありますのでご確認くださいね。芽キャベツは生でOKです。すぐに火が入ります。
2.<欧風カレー>を作る。まずは牛スネ肉から。ステーキで食べる程度にしっかりと「アセゾネ」(塩コショウ)してください。
そして中火で温めたフライパンに大さじ1のサラダ油を入れ、フライパンを軽く回して馴染ませます。油の乗ってないフライパンにタンパク質が当たるとくっ付きます。くっ付くとそこから焦げます。焦げると苦味が出ます。ですからフライパンをよく温めて油をよく馴染ませること、当たり前ですけれどすごく大切なこと。上手にお肉を焼くポイントです。お肉を乗せるときに熱した油が跳ねないように気をつけてくださいね。スタートからテンション下がりませんように。意外と跳ねますのでご注意です。
お肉を乗せたらしばらく動かさずに放っておきます。フライパンを揺すってみて、全てのお肉が鍋肌から離れているようでしたら順番に返して行きましょう。
これくらいの量ですと返しているうちにトングが熱くなってきますので、ここで一度弱火に下げます。お肉の片面が焼ける頃にはフライパンは結構温度が上がっているのです。返したらなるべく全面をコンガリ狐色に焼きましょう。程よく焼けましたら圧力鍋の中に移して行きます。
3.「ミルポワ」も「ブーケガルニ」も投入します。
4.お肉を焼いて旨味の残っているフライパンに、赤ワインを入れ「デグラッセ」します。※デグラッセ=鍋底に付いた焦げ・旨味を水、ワイン、ブイヨンなどで煮溶かすこと。
木ベラで底を掻きながら旨味をこそぎ取り、液体が2/3程になったら鍋に移します。この時に茶漉しを使って焦げなどは取り除きましょう。
後ほども液体を濾しますが、もしここで焦げが入るとスープに焦げ臭が残ります。面倒ですが丁寧に愛情のひと工夫を。分量のお水もフライパンに入れもう一度丁寧に鍋肌を洗いながら圧力鍋に移してください。トマトも入れて中火で沸かして行きます。
5.今回はフライパンを一度洗います。ここから長期戦に入るからです。弱火でよく水分を飛ばしたフライパンに、飴色玉ネギ用のバターを落とします。そして「アッシェ」したニンニクとショウガを投入。そのまま弱火でじっくり炒めてください。
ニンニクがほんのり色づいてきたらスライスした玉ネギを全量放り込みます。
そして塩を少々ふります。浸透圧を利用して水分を外に出しやすくするのです。全体に塩とバターを回してあげてください。
さあ、覚悟はいいですか?ここからトータル40分の勝負です!ルーを使ったり、ペーストを使ったりしますが今回は覚悟を決めて「オニオンと対峙」してください。食べた時にわかります。最高のコクと香りが待ってます!
この工程、誰かのために作っているのなら、めっちゃ「愛情」を炒めているようなものです。その人を思い浮かべながら、じっくり気持ちを込めて炒めましょう。
初めのうちは頻繁にかき混ぜなくても心配入りません。しばらくは酵素の力を引き出しながら、しんなりしてくるのを待ちます。次第に鍋底が水分で満たされて行きます。ここでもまだまだ大丈夫。時折かき混ぜながら水分を均一にしてください。一部が焦げるのを防ぐのと、玉ネギから均一に水分を出して行きます。フライパンを火にかけてからここまでで10分です。
6.隣の鍋が沸き始めたら注意が必要です。ボコボコ沸かし切ってしまってアクが沈んでしまったら元も子もありません。沸き立つ前に弱火にしましょう。
大きなアクを取りつつ、小さなアクを丁寧に取って行きます。
一度沸き切ったところでケチャップとソース、そして「ペースト類の諸々」を加え、蓋をして圧力をかけて行きましょう。
ここで忘れてはならないのが「ハウス ザ・カリー」には「ブイヨンペースト」が入っているということ。通常は煮込みが完了した所で一度火を止めてルーを投入しますので、そこで初めて箱を開けることになるでしょう。がしかし素晴らしいことに「ハウス ザ・カリー」には「ブイヨンペースト」がついているのです。恐らく購入時に「少々高いな…」と思われたはず。ここにコストがかけられています。
今回は「リンゴとはハチミツ」に「マンゴーチャツネ」 を加えて、奥行きのあるフルーティな香りと甘みをプラスしますが、更に「追い鰹」ならぬ「追いブイヨン」を投入します。もちろん十分に美味しいのです。「ハウス ザ・カリー」だけでも十二分に美味しいのです。これはこのルーを使って頂ければ驚くほどに実感できるはずです。あれこれルーを使ったあげく行き着いたのはここでした。スパイシーなカレーにはなりません。限って「欧風カレー」向きなのです。煮込みの時に入れるこの「ブイヨンペースト」の効果は絶大です。贅沢なこのもう一つの「追いブイヨン」をお許しください。
もう一度湧いてきたら圧力鍋の蓋を閉めます。蒸気を満ちて圧力がかかったら、弱火にして30分です。恐らく飴色玉ネギと一緒くらいに仕上がるはずです。
7.さて「飴色玉ネギ」に戻ります。ここから30分ほどです。かき混ぜているうちに、鍋底の水分が半量ほどになってきます。ここからは目が離せません。玉ネギから水分が出切ってしまうと一気に蒸発スピードが上がります。この蒸発とともに辛味成分も蒸発します。そしてショ糖の成分がさらに甘味を持つブドウ糖と果糖に分解されますので、玉ネギの甘さを最大限に引き出すことができるのです。
水分が完全に飛ぶと、鍋底に残った「糖質」が焦げ始めキャラメル化してきます。ここでお水を用意しつつ、勇気を持って中火にしてください。そしてかき混ぜ続けます。鍋肌が焦げてきたら大さじ2程の「水」を加え、焦げを「玉ネギ」に移して行きます。徐々に色づいてゆくのが分かるはずです。プリンのキャラメルやクレームブリュレの表面と同じで、「糖質を焦がす」ことにより香ばしい香りとコクが出てきます。ポイントは「シンプルに混ぜ続ける」こと。「焦げをコントロール」している作業なので、手が止まるとただの苦い焦げ付きになってしまうのです。「キャラメリゼ…キャラメリゼ…」と唱えながら混ぜ続けてください。何とも言えない香りが漂い、「玉ネギ」がどんどんペースト状になって行きます。
トータルで6~7回でしょうか。加えた水を蒸発させて行けばおのずと完成します。最後の水分を飛ばしたら火を止めます。
8.圧力鍋は30分たったら火を止め、圧力(蒸気)が抜けるのを待ちます。蒸気弁が下がったら蓋を開け、大きめのザルボウルと「味噌汁用の濾しアミ」を使って、スープを「パッセ(=passer)」して行きます。フレンチでは「濾し器を使ってフォンや煮汁など液体を濾す作業」をそう呼びます。まず初めにザルボウルに鍋の中身を静かに空けます。お肉がトロトロになっていますので崩れないように優しく空けます。
バットを2枚用意して、それぞれに「お肉」と「ニンジン・セロリ・トマト」を捕獲します。
お肉を崩さないように気をつけます。トングやスプーンを上手く使ってください。次にザルの具材をお玉を使って絞ります。
仕上げ用の手鍋などを用意し、目の細かい「味噌濾し」を使ってさらに綺麗な「フォン」にします。ここまで来たら完成は間近です。
飴色玉ネギをフォンに加え、かき混ぜたら「ハウス ザ・カリー」と「SB ディナー・ビーフシチュー」を投入し弱火でゆっくり溶かしてください。
ルーが溶け切ったらお肉も投入します。
隣のコンロで適度なサイズのフライパンを用意し、お好みの野菜をバターソテーします。「欧風カレー」はひと煮立ちしたら小さじ1の「白トリュフオイル」を入れて完成です。
お皿にライスを盛り付け「欧風カレー」をかけます。はじめに液体をかけてからその後でお肉を盛り付けると、高さも出て「盛り映え」します。ライスの方にはソテーした野菜と紫キャベツのマリネを添えてください。出来たらグリーンが欲しいので、「イタパセ」や「バジル」または「セルフィーユ」を飾ります。カレーが右か左か、論争は解決しません。ライスが奥です。
ボルドータイプのグラスにベリーと黒胡椒が香る「バートン・ヴィンヤーズ2019 メタル ザ・ブラック シラーズ」を注ぎ、スパイスとのマリアージュを。
何を食べて、何を思うのか。
誰といて、何をするのか。
15年前の当時、約1ヶ月ほど一緒に働いた間に激しく意気投合し、強烈に影響を受けた藤井将之シェフ。パリ帰りでたくさんの面白い話と、こっそり密輸してきたバスクのチョリソーを小出しにしてくる、ずんぐりむっくりの髭面で、八重歯がチャーミングな天才料理人。この日も深夜にワインを飲みながら料理の話は続いた。
「たかちゃん(私の事)、もともとフランスには今のようなおしゃれなフレンチなんて無かったんだよ。そもそもが領地を奪い合う野蛮な国で、食事だってローストがほとんど。それも一度にテーブルに出され、食事だって手掴みで食べていたんだ。それでね…」
目次 [開く]
■フレンチへの牽引者
・34歳で料理の世界に飛び込むまで
21歳で美術学校を出てから、外国車の内装皮革のレストレーションやカラーコーディネートの職人を5年ほど勤める。イタリア好きの社長の元、ワンオフのアーティスティックな仕事は集中力と専門技術を要し、常に作品であり物を作る悦びは心の底から「これが天職だ!」と感じさせてくれた。
幼少から工作が好きで、サランラップの芯やダンボールに萌えているような子供だったから60年代~80年代の歴史ある車から内装パーツをバラシてはレザーを剥がし、型を取り、時には復元させ、時には色を変え、また車に戻す。それはまさに当時の職人とのモノを通したコミュニケーションであり、毎日が学びと感動と鳥肌の連続であった。
・絵の具まみれの学生時代とイタリアブーム
スパゲッティはパスタと呼ばれ、イタリアワインが身近に買えるようになる。深夜にはセリエAが生中継され、中田英寿がゴールを決める。職場のガレージに行けばフェラーリやベンツが並んでいるわけだから刺激的だ。すっかりイタリアに惚れてしまった。文化の全てに華やかなアートが溢れているのだ。ミッソーニのシートが載ったランチア・インテグラーレを思わず所有してしまったほどに。ファッションも料理も最高だ。私にとっては、工作も、レザー加工も、料理も何かを作り出すことこそが、同じ喜びを味わえる一つの方法で無心になれ、時間を忘れ、無条件に楽しいひと時を生み出してくれる。
・自動車業界に押し寄せた波
そして「ステーションワゴン」の一大ブームがやって来た。多くの自動車雑誌はこぞってブームをもてはやしメーカーも流行路線のモデルチェンジに大忙し。改造パーツが飛ぶように売れ、エクステリアだけでなくインテリアもその渦に巻き込まれて行く。そこで「シートキット」なるものが流通し始めた。車から外したシートをただ脱がせては、中国製の縫製の歪んだシートカバーを着せて行く作業。そこには偉大な職人達とのコミュニケーションはなく、早さだけが正義であり、とにかく数を求められる仕事になってしまったのだ。
なんとまあ「早い」「安い」「うまい」は飲食店に限った事ではないようだ。「生産性」と「低コスト」に「ニーズ」が加われば、商売の方程式は解けてゆく。儲けがそこにあれば経営者は背に腹はかえられない。
・お前なんかイタリアにでも行ってしまえ
作る悦びを感じられず、息が詰まって行く。何かが違う。結局、お世話になったその社長とは決別してしまう。悔しくて、泣けてしょうがなかった。しばらく何もやる気が起きなかった。
ブラブラしていると友人たちから喝をいただく。お前なんか金を貯めてイタリアでもどこでも行ってしまえと。俺たちには継がなきゃいけない親の会社がある。「そこまで好きになれるものに出会えたお前が羨ましい」と言われた。自分の人生を無駄にするなと本気で怒られた。それで目が覚めた。
だが次に就いたのが営業職だった。給料が高く、お金を貯めて本気でイタリアでに行こうと思ったのだ。テレアポで固定給なしの完全フルコミッション。上司に可愛がられ徹底的に「お客様の立場で物事を考える」を叩き込まれる。これは前職のブロックス時代にマネージャーとして大いに役に立った。売る物が変わっても売れるのが本当の営業だと教えられた。
半年くらいで部下が付き課長になった。本社が大阪にあったその会社は翌年東京に支店を作ると言う。すごいタイミングで上司が居なくなり、支店長になってしまう。ガムシャラに支店を守った。いつしかイタリアの夢は消えていた。
物を売る仕事に情熱を傾けて来たものの、再び物を作る悦びを味わいたくなった。
・そして34歳で料理を選んだ。
「たかちゃん、それでね、どこからフレンチが発展したかと言うとね、実はイタリアなんだよ。メディチ家のカトリーヌがフランスのアンリ2世のところに嫁ぐことになり、イタリアンの料理人を引き連れてフランスにやって来たんだ。その時に料理と一緒に、白い皿もフォークもテーブルマナーも待ち込まれたんだよ。フレンチの起源はイタリアンなんだよ」
その夜の話は衝撃だった。また「此処に戻って来られた」と思った。モノづくりの快感の毎日に戻れる気がしたのだ。個人的なルネッサンスに思わず涙が溢れてしまった。
■藤井将之シェフとの出会い
藤井シェフは、元「ヴァトゥ」のシェフであり、伝説の店「オーバカナル1号店」の出身だ。現在は恵比寿「オー・ギャマン・ド・トキオ」にて総帥木下シェフに代わり腕を奮っている。また、今や名物となった中目黒「ブロックス」の「フォアグラバーガー」を生み出したのもこの人だ。料理への飽くなき探究心を奇想天外なアイデアで表現するその発想には誰もついて行けない。ほんのり話が噛み合わないところも天才ぶりを醸し出している。ひと月ほどで別れの時は来てしまった。マニアックで濃密で、心躍る料理の話を肴に、ワインを飲んだあの頃が懐かしい。
その後、藤井シェフは恵比寿の「ギャマン」に。私は藤井シェフの口利きで「ヴァトゥ」に行き、5年後再び「ギャマン」に誘われる。もしも出会っていなかったなら、今もこうして料理の世界に携わっていなかったと確信している。もちろんフレンチにも飛び込んでいなかっただろう。
「たかちゃん、イタリアンが好きなら、料理が好きなら、一度はフレンチやるべきだよ。フレンチ本当に楽しいから」
■フランス帰りの欧風カレー
この流れでなんの料理を作るか少し悩んだ。何だかちゃんとしたフレンチを作るべきなのか、否か、と迷ったわけだ。そしてふと、過去に調べたことを思い出す。それは「欧風カレー」。私もしばらくは「ヨーロッパ風カレー」のことだと思っていたのだがインドカレーに相対する「ヨーロッパのそれ」ではなかったのである。なんなのか「欧風カレー」。実はビックリ、日本発祥のカレーなのである。大きな「へーっ」があちこちから聞こえる。
そうなのだ。カレーは奥が深いのである。
そもそもインドカレーという概念すらおかしいのだ。全ての料理にスパイスが使われており、いわゆる「カレー」を作っている意識は一切ないのである。
ターバンを巻いてヒゲの生えたインド人は、「イメージ戦略」の賜物である。まんまと嵌められているのだ。もはやその方がカレーが美味しそうに見えてしまうから不思議だ。さもすると、笛の音とともにツボからヘビが出てくる所を想像してしまうのは、私だけであろうか?あぁ、「ターバンと壺とヘビ」で無性にカレーが食べたくなって来てしまった…。
・デミグラスとチャツネをカレーに加えて考案された「欧風カレー」
話を戻す。「欧風カレー」であった過去にふと思い立ち、徹底的にカレーを調べたことがあった。これはマジで奥が深い。本日は、まあまあズラズラと、というかダラダラと前述に自己紹介コラムを書いてしまったので「カレーの深掘り」はまた次回にするが、インドとイギリスと日本における「歴史的な外交と栄養学的な面を持った経済的な話」が詰まっているのである。あぁー語りたい。
とはいえ至極真面目に「フレンチへの牽引者」を辿って今回思い出したことは、東京神田の老舗カレー店「ボンディ」の創業者、村田紘一氏。絵画と彫刻の勉強の為にフランスに渡り、現地のレストランでのアルバイトと共に4年間を過ごし、帰国後に絵でも彫刻でもなく「料理」を始めたところにいたく共感した。そして「ボンディ」が通っていた芸術学校への通学路にあったことも感慨深い。村田さんを通して分かったのが、おそらく「フォン・ド・ヴォー」をベースに取ったであろうデミグラスをチャツネと共にカレーに加えて考案したのが「欧風カレー」であること。
これが今回の最大のポイントであるのであります。
■市販ルーを使いつつ、フレンチっぽく。
「フォン・ド・ヴォー」とはそもそも「仔牛の骨」から取った出汁なのでありますがそんな物を一般家庭で手に入れてオーブンでローストして作れるわけもなくどうしたものかと考えを巡らせますが「ルー」は使うに越したことはなくその中でも経験上で厳選した「ルー」をご推薦しました。「フォン」いわゆる出汁に関しては今回「コンソメ」を取る部位である「スネ肉」を使い豊富なコラーゲンと共に「旨味」も引き出しつつ、出汁としてしっかりと香味野菜も使うことで、主婦の皆様には怒られてしまいそうな工程を交えつつ、フレンチっぽいことが出来たらと思う所存でございます。
母親は料理好きの書道家であり、おやつも手作りするような人で、包丁も火も「怪我をして怖さを覚えなさい」との教育でした。父親はエンジニアで、壊れた家具や家電をサクッとバラしてはサクッと直してしまう人であり土曜日の料理人です。焼きそばとラーメン率高し。
父も幼少からカッターナイフを握らせてくれて、持ち方も怪我をしない切り方も教わって来ました。そんな環境で育って来たわけですから、我が人生には多大な影響を与えてくれます。
初めて1人で料理をしたのは小学4年でした。
その時より究極のテーマはいつもカレーで常に進化を繰り返しておりますが、現時点での「変態ソムリエ佐藤のカレー」としてご理解頂けましたら幸いでございます。
今後も精進し進化をして参ります。
■フランス帰りの欧風カレー
レシピ制作:佐藤 尊紀
<材料 4皿分>
カレールー「ハウス ザ・カリー」中辛(こちらはお好みで) 1箱
デミグラス「SB ディナー・ビーフシチュー」 約半量(こちらもお好みで)
牛スネ肉 650g
塩 適量
黒コショウ 適量
サラダ油 大さじ1
<煮込み用ミルポワとブーケガルニ>
ニンジン 1本
セロリ 1本
ローリエ 2枚
タイム 3本
パセリ(茎) 3本
ネギ(青い部分) 3本分
ホワイトペッパー(ホール:あれば) 3粒
<飴色玉ネギ>
ニンニク 1片
ショウガ 1片
玉ネギ(小) 4個
バター 25g
塩 少々
水 約200ml
水 850ml
赤ワイン(バートン・ヴィンヤーズ2019 メタル ザ・ブラック シラーズ) 300ml
水煮トマト(缶) 1缶
ケチャップ 30g
ソース 30g
ハウス リンゴとハチミツペースト 1袋(40g)
ハウス マンゴーチャツネ(ペースト) 1袋(40g)
ハウス ブイヨンペースト 1袋(30g)
トリュフ油(白) 小さじ1
<トッピングのお野菜(「野菜のバターソテー」2人分)>
ジャガイモ(小:下茹でしたもの) 1個
芽キャベツ 1個
赤パプリカ 少々
カボチャ(スライス) 2枚
レンコン(スライス) 2枚
バター 30g
塩コショウ 適量
<紫キャベツのマリネ>
紫キャベツ 1/4個
塩 適量
フランボワーズビネガー(または赤ワインビネガー) 適量
ご飯(炊きたて) 4皿分
<下準備>
・牛スネ肉は一口大より少し大きいサイズに切ります。煮込み料理の基本としてお肉が縮みますので大きめに。特に今回はスネ肉ということもあり、コラーゲン質が溶け出して縮みやすいので大きめに切りましょう。お肉が大きい方が見た目も盛れます。特に今回は本来固いスネ肉を短時間で柔らかくしてくれる「圧力鍋」を使いますのでトロトロに仕上がります。ナイフもいらないほどに超絶柔らかくほぐれます。焼いてそのまま食べるわけではないので特に常温に戻す必要もありません。そしてスジを美味しく食べたいわけですから特に掃除も必要なし。水気をペーパータオルでしっかり取り除いておきます。・本日の主役「玉ネギ」はペティナイフの先で根の部分をくりぬきます。
そして包丁の先で芯の部分をえぐり出します。芯の部分は成分が強いので玉ネギにしろニンニクにしろ、香りが強く雑味になりやすいです。また胸焼けの原因にもなるそうなので丁寧に取り除きましょう。この段階で処理しておくと、半分に切ってから包丁を入れるよりも少しだけ手間が省けるのと、根っこと一緒にV字に刃を入れるよりも玉ネギがバラけにくい利点があります。みじん切りにする際に根を残すとき以外はこの方法がおすすめです。皮を剥き後の玉ネギが丸ごと使えるようになります。今回は縦半分にカットしたらひたすら薄くスライスしてください。
小さい玉ネギにした理由は、女性の力でも小さめの包丁でも切りやすいからです。4個はなかなかボリュームあります。涙が止まりませんよw。今回の主役は「飴色玉ネギ」です!頑張って!
・セロリとニンジンは煮込み用の香味野菜としての活躍です。ニンジンは皮を剥いて頭を落とし、ボディの真ん中あたりまで十字に切り込みを入れます。こうする事で出汁が出やすくなります。セロリは鍋に入るほどの長さにカット。ブーケガルニも纏めておくとお料理しやすいですよ。今回は煮込んだ後でお肉を取り出し、フォンを一度濾しますのでペーパータオルで巻いたり糸で縛ったりしなくても良いです。縛ればそれだけ取り出しやすいですが時間短縮にて。
フレンチでは「玉ネギ・ニンジン・セロリ」の3つを「ミルポワ=mirepoix」と言って煮込みには欠かせない定番のお野菜になります。ちなみに基本は「玉ネギ:ニンジン:セロリ=3:2:1」が黄金比です。イタリアンでも「ソフリット=soffritto」というものがあり、この3つをみじん切りにして水分が飛ぶまでよく炒めたものがあります。こちらも見込み料理に使うもので香りとコクを引き出します。厳密に言うとイタリアでのソフリットは地域によって様々でフランスでの「ミルポワ」ほどシンプルではないかもしれません。またスペインやプエルトリコでも「ソフリト」なる物がありニンニクと玉ネギにトマトや唐辛子が入ったものでそれ自体が煮込み料理としてテーブルに乗るものも有るようです。いずれにしても香味野菜は大活躍ですね。
・ニンニクとショウガは皮を剥いて「アッシェ(みじん切り)」に。ニンニクは芯を取り除きます。・ワインやお水なども、キッチンにスペースがあり大きめの計量カップやボウルなどがあれば、あらかじめ計量しておくことをオススメします。火を使った調理中に計量しなくても済みますのでスムーズです。ケチャップやソースもしかり。今回は工程をお見せするためにペースト3種の写真もお載せしますが、ケチャップ等と一緒にまとめておくと便利です。いちいちパッケージを開けることになりますので。
・トッピングの野菜は基本的に有るものでも構いません。用意するとすれば「色味」に着目すると盛り付けが楽しめます。赤パプリカは味的にも色的にもオススメ。カボチャもオレンジが綺麗ですしカレーとの相性も良いです。意外と「映える」のがレンコンです。あの穴の開いたデザインは特徴的です。蓮根のきんぴらにしようと買ってきた物が冷蔵庫にあれば端を少々頂いちゃうか、またはその逆で。今回は使いませんでしたがお茄子さんも最高ですね。ジャガイモであれば事前に下茹でしておきましょう。いきなり生からソテーだと時間がかかります。何度か下茹でレシピを過去に載せてありますのでご確認くださいね。芽キャベツは生でOKです。すぐに火が入ります。
<作り方>
1.<紫キャベツのマリネ>を作る。紫キャベツのマリネを仕込んで行きます。まず注意しなければいけないのは白い洋服。一瞬で色移りします。お着替えしてから仕込みましょう。作り方は超簡単。千切りにしてビネガーを和えるだけ。それではまずは千切りにして多めの塩を揉み込みます。15分ほど放置すると水分が出て来ます。ここで浄水を使って塩抜きします。浸かる程度にお水を張って軽く揉んでください。そしてちょこっとお味見を。ビネガーを加えると塩味が弱く感じますので「ちょっと効いてるかなぁ」くらいで良いでしょう。好みの塩加減で水を切り、しっかりと絞ります。色移りしますので布ではなく手絞りで良いでしょう。しっかり絞れたらビネガーを適量まぶしてよく混ぜます。味見をしながらお好みに。2.<欧風カレー>を作る。まずは牛スネ肉から。ステーキで食べる程度にしっかりと「アセゾネ」(塩コショウ)してください。
そして中火で温めたフライパンに大さじ1のサラダ油を入れ、フライパンを軽く回して馴染ませます。油の乗ってないフライパンにタンパク質が当たるとくっ付きます。くっ付くとそこから焦げます。焦げると苦味が出ます。ですからフライパンをよく温めて油をよく馴染ませること、当たり前ですけれどすごく大切なこと。上手にお肉を焼くポイントです。お肉を乗せるときに熱した油が跳ねないように気をつけてくださいね。スタートからテンション下がりませんように。意外と跳ねますのでご注意です。
お肉を乗せたらしばらく動かさずに放っておきます。フライパンを揺すってみて、全てのお肉が鍋肌から離れているようでしたら順番に返して行きましょう。
これくらいの量ですと返しているうちにトングが熱くなってきますので、ここで一度弱火に下げます。お肉の片面が焼ける頃にはフライパンは結構温度が上がっているのです。返したらなるべく全面をコンガリ狐色に焼きましょう。程よく焼けましたら圧力鍋の中に移して行きます。
3.「ミルポワ」も「ブーケガルニ」も投入します。
4.お肉を焼いて旨味の残っているフライパンに、赤ワインを入れ「デグラッセ」します。※デグラッセ=鍋底に付いた焦げ・旨味を水、ワイン、ブイヨンなどで煮溶かすこと。
木ベラで底を掻きながら旨味をこそぎ取り、液体が2/3程になったら鍋に移します。この時に茶漉しを使って焦げなどは取り除きましょう。
後ほども液体を濾しますが、もしここで焦げが入るとスープに焦げ臭が残ります。面倒ですが丁寧に愛情のひと工夫を。分量のお水もフライパンに入れもう一度丁寧に鍋肌を洗いながら圧力鍋に移してください。トマトも入れて中火で沸かして行きます。
5.今回はフライパンを一度洗います。ここから長期戦に入るからです。弱火でよく水分を飛ばしたフライパンに、飴色玉ネギ用のバターを落とします。そして「アッシェ」したニンニクとショウガを投入。そのまま弱火でじっくり炒めてください。
ニンニクがほんのり色づいてきたらスライスした玉ネギを全量放り込みます。
そして塩を少々ふります。浸透圧を利用して水分を外に出しやすくするのです。全体に塩とバターを回してあげてください。
さあ、覚悟はいいですか?ここからトータル40分の勝負です!ルーを使ったり、ペーストを使ったりしますが今回は覚悟を決めて「オニオンと対峙」してください。食べた時にわかります。最高のコクと香りが待ってます!
この工程、誰かのために作っているのなら、めっちゃ「愛情」を炒めているようなものです。その人を思い浮かべながら、じっくり気持ちを込めて炒めましょう。
初めのうちは頻繁にかき混ぜなくても心配入りません。しばらくは酵素の力を引き出しながら、しんなりしてくるのを待ちます。次第に鍋底が水分で満たされて行きます。ここでもまだまだ大丈夫。時折かき混ぜながら水分を均一にしてください。一部が焦げるのを防ぐのと、玉ネギから均一に水分を出して行きます。フライパンを火にかけてからここまでで10分です。
6.隣の鍋が沸き始めたら注意が必要です。ボコボコ沸かし切ってしまってアクが沈んでしまったら元も子もありません。沸き立つ前に弱火にしましょう。
大きなアクを取りつつ、小さなアクを丁寧に取って行きます。
一度沸き切ったところでケチャップとソース、そして「ペースト類の諸々」を加え、蓋をして圧力をかけて行きましょう。
ここで忘れてはならないのが「ハウス ザ・カリー」には「ブイヨンペースト」が入っているということ。通常は煮込みが完了した所で一度火を止めてルーを投入しますので、そこで初めて箱を開けることになるでしょう。がしかし素晴らしいことに「ハウス ザ・カリー」には「ブイヨンペースト」がついているのです。恐らく購入時に「少々高いな…」と思われたはず。ここにコストがかけられています。
今回は「リンゴとはハチミツ」に「マンゴーチャツネ」 を加えて、奥行きのあるフルーティな香りと甘みをプラスしますが、更に「追い鰹」ならぬ「追いブイヨン」を投入します。もちろん十分に美味しいのです。「ハウス ザ・カリー」だけでも十二分に美味しいのです。これはこのルーを使って頂ければ驚くほどに実感できるはずです。あれこれルーを使ったあげく行き着いたのはここでした。スパイシーなカレーにはなりません。限って「欧風カレー」向きなのです。煮込みの時に入れるこの「ブイヨンペースト」の効果は絶大です。贅沢なこのもう一つの「追いブイヨン」をお許しください。
もう一度湧いてきたら圧力鍋の蓋を閉めます。蒸気を満ちて圧力がかかったら、弱火にして30分です。恐らく飴色玉ネギと一緒くらいに仕上がるはずです。
7.さて「飴色玉ネギ」に戻ります。ここから30分ほどです。かき混ぜているうちに、鍋底の水分が半量ほどになってきます。ここからは目が離せません。玉ネギから水分が出切ってしまうと一気に蒸発スピードが上がります。この蒸発とともに辛味成分も蒸発します。そしてショ糖の成分がさらに甘味を持つブドウ糖と果糖に分解されますので、玉ネギの甘さを最大限に引き出すことができるのです。
水分が完全に飛ぶと、鍋底に残った「糖質」が焦げ始めキャラメル化してきます。ここでお水を用意しつつ、勇気を持って中火にしてください。そしてかき混ぜ続けます。鍋肌が焦げてきたら大さじ2程の「水」を加え、焦げを「玉ネギ」に移して行きます。徐々に色づいてゆくのが分かるはずです。プリンのキャラメルやクレームブリュレの表面と同じで、「糖質を焦がす」ことにより香ばしい香りとコクが出てきます。ポイントは「シンプルに混ぜ続ける」こと。「焦げをコントロール」している作業なので、手が止まるとただの苦い焦げ付きになってしまうのです。「キャラメリゼ…キャラメリゼ…」と唱えながら混ぜ続けてください。何とも言えない香りが漂い、「玉ネギ」がどんどんペースト状になって行きます。
トータルで6~7回でしょうか。加えた水を蒸発させて行けばおのずと完成します。最後の水分を飛ばしたら火を止めます。
8.圧力鍋は30分たったら火を止め、圧力(蒸気)が抜けるのを待ちます。蒸気弁が下がったら蓋を開け、大きめのザルボウルと「味噌汁用の濾しアミ」を使って、スープを「パッセ(=passer)」して行きます。フレンチでは「濾し器を使ってフォンや煮汁など液体を濾す作業」をそう呼びます。まず初めにザルボウルに鍋の中身を静かに空けます。お肉がトロトロになっていますので崩れないように優しく空けます。
バットを2枚用意して、それぞれに「お肉」と「ニンジン・セロリ・トマト」を捕獲します。
お肉を崩さないように気をつけます。トングやスプーンを上手く使ってください。次にザルの具材をお玉を使って絞ります。
仕上げ用の手鍋などを用意し、目の細かい「味噌濾し」を使ってさらに綺麗な「フォン」にします。ここまで来たら完成は間近です。
飴色玉ネギをフォンに加え、かき混ぜたら「ハウス ザ・カリー」と「SB ディナー・ビーフシチュー」を投入し弱火でゆっくり溶かしてください。
ルーが溶け切ったらお肉も投入します。
隣のコンロで適度なサイズのフライパンを用意し、お好みの野菜をバターソテーします。「欧風カレー」はひと煮立ちしたら小さじ1の「白トリュフオイル」を入れて完成です。
お皿にライスを盛り付け「欧風カレー」をかけます。はじめに液体をかけてからその後でお肉を盛り付けると、高さも出て「盛り映え」します。ライスの方にはソテーした野菜と紫キャベツのマリネを添えてください。出来たらグリーンが欲しいので、「イタパセ」や「バジル」または「セルフィーユ」を飾ります。カレーが右か左か、論争は解決しません。ライスが奥です。
■家メシを「特別な夜の一皿」に変える1本
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