寒ブリとパクチータルタルの菜の花ニソワーズ【ソムリエが教える「エッグ」なサラダ vol.2】
2021年2月21日 08:00■具材を楽しむフレンチの定番サラダ
ニソワーズ、ご存知ない方は是非一度召し上がっていただきたいサラダです。
私はこれがとても好きで、ソムリエ時代に「佐藤さんニソワーズ好きだから」と私の誕生日の賄いに、キッチンスタッフがわざわざ作ってくれたことを思い出します。それほどにニソワーズは好きなサラダなのです。
ニソワーズとは、シンプルな味付けで普通のヴィネグレットで出されることが多く、種類の多い具材を素材の味そのままに楽しめるフレンチの定番サラダです。
フランスには「サラダ・リヨネーズ」もあります。まあ、もっともっとローカルなサラダもあるでしょうが、世界中で知られているメジャーなサラダはそれ程ないかもしれません。
それぞれ土地の名前が付けられており「サラダ・ニソワーズ」は南仏プロヴァンスにあるニースのサラダ。つまりは「ニース風」。「サラダ・リヨネーズ」はブルゴーニュとアヴィニヨンのちょうど真ん中あたりオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ圏の都市リヨンのサラダです。こちらも「リヨン風」となります。
© OpenStreetMap contributors
■海と大地の恵み「サラダ・ニソワーズ」
ニースはイタリアの西端ピエモンテ州の国境まで約15km程の地中海沿岸です。その昔1388年から1860年までの約470年間、イタリアを統一していく「サルデーニャ王国」の前身「サヴォイア公国」に属していたそうで、ほぼイタリアと言っても過言ではない地域ゆえ、強くイタリア文化の影響を受けているようです。
食材に関してもイタリア共通の物が多く見られます。特に「サラダ・ニソワーズ」に関していえば「ツナ」を使用することが特徴で、その他にはトマト、オリーブ、ニンニク、アンチョビ、ハーブ類、またインゲン、茹でたジャガイモ、ゆで卵なとが定番的で定義的な食材です。
まさにこの時期、5月の終わりから6月の終わりまでの1か月が地中海のマグロ漁の旬にあたり、アンチョビの原材料となるカタクチイワシの旬も5月に始まるそうです。そしてワインでもプロヴァンスの地産のロゼが夏至の日に解禁になる物があるほど。初夏の海と大地の恵みを楽しむ郷土料理であるようですね。
■玉ネギの一大産地「リヨネーズのサラダ」
一方リヨネーズはというと、こちらは「玉ネギ」の一大産地です。こちらはサラダ以外もソースやガルニチュールでも有名でとろとろになるまで炒めたオニオンが使われます。ジャガイモを合わせた代表的な家庭の味「ポム・リヨネーズ」などもその一つ。サラダでも「オニオンリング」と「ウフ(卵)・ポシェ(湯がく)」と呼ばれる半熟卵が載っていて、ドレッシングにマスタードが使われることが「サラダ・リヨネーズ」の定義のようです。
どちらのサラダも地元の作り手によって様々でしょうし。料理には著作権も国境もありませんから、自由な解釈やアレンジがあるからこそ面白いのですね。
■ロマンと卵と「シーザーサラダ」
日本では一番有名であろう「シーザーサラダ」だって「ジュリアス・シーザーが愛したサラダだ」とか「ローマのプンタレッラで作ったマンマの味がアメリカでロメインレタスに変わった」とか諸説あります。どうやら文献的に有力な起源は1920年ごろの禁酒法時代にハリウッドで働くアメリカ人が、ほど近いメキシコのティファナへ酒を求めて行き、料理人シーザー・カルディーニ氏が経営するレストラン「シーザーズ・プレイス」で即興で作ったものがそれに当たるようです。
とはいえ2つの俗説はいずれも「そうであったら面白そう」なロマンあふれるお話ですね。そうそう、そして面白いことに初期のティファナのシーザーサラダにも「半熟卵」が載っていたそうな。卵は大人気です。更にはソースにも卵黄が使われ、ビネガーとオリーブオイルなどを乳化させたドレッシングやマヨネーズ的なものが使われていたようです。
■おうち時間の笑顔のために愛を込めて
起源を辿ればフレンチだって、イタリアのメディチ家の功績が大きいのですが、各地で発展し新大陸にまで伝わり、日本にまで届いたのはとても面白いことです。食に限らずワインに限らずお酒も含めた人々の「欲求」や「追求」は脈々と永遠に続くようです。
今こうして、世界中がコロナの時代にて生活スタイルも食文化も変化を余儀なくされています。緊急事態宣言が発令され、たくさんの問題を抱えつつ、それでも人は食べなければ生きられません。生きるための栄養だけでなく、心<も健康にならなければなりません。できたら私のレシピやあなたのお料理が、少しでも誰かの笑顔に変わればと心から思います。みんなのおうち時間が少しでも笑顔と会話のあふれる楽しい時間になりましたら、私も幸せです。
これからも感謝と愛を込めてお料理していきたいと思います。
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■日曜日の昼下がりにワインで乾杯を
今日は今まで作らなかった「サラダ」を一皿。すでに散々語った前述のツナではありませんが、今が旬の「寒ブリ」を使って。いきなりアレンジですみません。魅力的なサラダは数多ありますが今回はやはり大好きな「ニソワーズ」で参ります。ただし冷蔵庫にあるお野菜やスーパーに並ぶ手に入りやすい「旬」なもので作りたいと思います。ニソワーズの定義を意識しつつ再構築してゆく感覚です。そして日曜日の昼下がりに、日当たりの良い室内でゆっくりワインとともに楽しめるようなサラダになったら嬉しいです。
立春も過ぎましたし、日の入りも伸びてきました。日差しの差し込む室内は暑いくらいです。平日はお国のルールでなかなか飲みにゆけません。日曜日はお昼から乾杯でもいいんじゃないかと。今年のお花見シーズンにはお外で楽しめることを祈りましょう。
さてさてそれではレシピです。
■寒ブリとパクチータルタルの菜の花ニソワーズ
レシピ制作:佐藤 尊紀
<材料 2人分>
ブリ(寒ブリ:切り身) 2切れ
塩 適量
ホワイトペッパー 適量
オリーブ油(揚げ用) 適量(寒ブリが半分浸かる程度)
<衣>
パン粉 適量
薄力粉 適量
溶き卵 適量
プチトマト(赤) 3個
プチトマト(黄) 3個
ジャガイモ(メークイン) 1個
菜の花 4本
サヤインゲン 6本
トレビス 適量
ラディッシュ 2個
赤ピーマン 1/2個
アンチョビ 4切れ
ブラックオリーブ 10個
ニンニク 1片
<タルタルソース>
ゆで卵(固ゆで) 2個
パクチー(香菜) 4束
赤玉ネギ(新玉ネギでも可) 50g
マヨネーズ 80g
コルニッション(ピクルス) 3個
ケイパー 10g
寿司酢 20g
塩 2g
<下準備その1 茹で物>
下準備のポイント・コツ
※パーツも多いので時間のかかる仕込みから始めて行きましょう。※サラダなので野菜が冷えている必要があります。前日などに常備菜としてまとめて仕込んでおくと数日間保つので、調理のたびに用意する必要がなくなり、準備の工程も省かれるので大変便利ですしおすすめです。
できたら芋類は冷めにくいので前日か早い時間での仕込みをお勧めします。冬がは暖かくても美味しいのですが、夏場はやはり冷たい方がオススメです。
・「トレビス」は一口大にちぎって浄水に晒します。クタっと萎びたところがなくなり全体にパリッとしてきたら水から引き上げます。サラダドライヤーでしっかり水気を切ったら、底にペーパータオルを引いたタッパーで保存しましょう。・「パクチー」は束を解いてカットせずにそのまま浄水で戻します。枝がピンと立ってきて水面から飛び出すようになってきたら引き上げのサインです。こちらもサラダドライヤーでしっかりと水気を切り、ひとまずはペーパータオルとタッパーで保存しましょう。他の火を使う下順備が一通り終わったところで、場所を確保し野菜のカットを始めます。
・手鍋に多めの浄水を張り塩を「大さじ1」ほど入れて強火で沸かします。ザルボウルを用意して色留め用の「氷水」を用意します。
茹で野菜はすぐに冷まさないと綺麗な緑色が濁って行きます。お湯に野菜を投入してからでは遅すぎるのであらかじめ用意しておきましょう。
・「インゲン」は下の方をまとめて持ち、軽くまな板に叩きつけながら端を揃えます。揃ったところでまとめてヘタをカットしてください。先端の細いところは残します。必ず沸騰したお湯で茹でましょう。硬さはお好みですが30秒程で茹で上がります。引き上げたらすぐに氷水で冷やします。
・「菜の花」は花や葉の部分は火の通りが早いですが、茎は太いのですぐに火が入りません。引き上げが早いと茎が固く残りますし、茎に合わせて茹で過ぎてしまうと花や葉は溶けてしまいます。そこで茹でる前に茎の部分に切り込みを入れておきます。こうすることで火の入りをよくし、全体に歯応えを残したベストな茹で加減を実現することができようになります。
「菜の花」は「インゲン」などに比べて質量が大きいので、たっぷりのお湯でしっかりと沸いた状態で湯がいてください。また葉が広がり、茎も太く投入直後に一瞬温度が下がります。お湯の中でも温度に差が出ますので、葉をいたわりながら菜箸などで優しく撹拌してあげてください。こちらは20秒ほどで茹で上がります。予熱も考慮に入れながら、サイズが小さければそれだけ早く氷水に引き上げましょう。
・茹で野菜のコンロが開いたところで、また鍋に浄水を8割ほど入れ沸かします。こちらは卵用なので塩は入れません。沸騰したらとにかく静かに「卵」を投入してください。
優しく投入しないと鍋底に卵がヒットして殻が割れてしまいます。そうなるとそこから白身が滲みますので、茹で上がりを剥いたときに筋が入ってしまったりと、キレイなむき卵にならなくなってしまいます。投入時は特に優しくしてあげてください。
<下準備その2 カット物:野菜と魚>
※茹でものが一通り終わりましたら、調理器具もそこそこ多いので一旦片付けをして、スペースを確保します。有効な空間を確保してからまな板を広げてください。ここからカットに入ります。・「トマト」も枝ごとしばらく水に晒しておくと瑞々しさが持続します。カットは縦半分に。
「トマト」はヘタを外してしまうと見栄えが寂しいので、ヘタはつけたままカットします。水につけておくことで柔らかさも出ますので食べられないこともないです。
・「ラディッシュ」も浄水に晒します。もし表面が萎びていても硬さが戻りシャキッとします。カットは薄すぎると食感がなくなり面白くないので、2mmほどの厚さでスライスを。・「ニンニク」は上下を落とし皮を剥き、半分にして芯を取り除いておきます。
・「アンチョビ」は1フィレを斜めに3等分に。大きものは4等分にカットしておきます。盛り付け時にジャガイモの上に載せます。
・「ジャガイモ」は15mm幅に輪切りにし、さらにそれを十字に4等分します。
・「赤玉ネギ」をスライスして行きます。まずヘタをペティナイフの先端でくりぬき、中に見える芯をペティを使ってほじくり出します。イメージとしては芯に刺して持ち上げる感覚です。これは普通の玉ネギでも同じ作業をします。スライスしてしまってからでは芯を取り除きにくいからです。初めに取ってしまいましょう。芯が取れたら繊維に沿ってスライスします。そしてザルボウルを用意して、浄水につけて辛味をとって行きます。
小さいザルボウルでしたら出来たら流水で、大きなザルボウルでしたら水をいっぱい溜めて、3回ほど交換してください。サラシが終わったらサラダドライヤーで水気を切り、ペーパータオルを敷いたタッパーで保存します。毎日サラダを食べるならとても重宝します。だって毎回オニスラ作れないですから。こちら鰹節と一緒に冷奴に乗せると美味しいです。
・いよいよ「寒ブリ」です。内臓側の膜と、その下に骨が残っていたら包丁で削ぎ落とします。また皮も下にして身との間に包丁を入れ、皮を引っ張りながら左右に揺するとキレイに皮を剥ぐことができます。続いて「アセゾネ」をして「パネ」します。※下記解説参照
「アセゾネ」=assaisonnerは基本的に素材に塩胡椒をすることを言います。「パネ」=panerはパン粉をまぶすことを言います。小麦粉、溶き卵、パン粉をつけたものを「パネ・ア・ラングレーズ」と呼びます。アセゾネは「ホワイトペッパー」にて。
パネした寒ブリ。
<作り方>
※先に寒ブリを揚げてしまうと、タルタルソースを仕込んでいる間に、せっかく脂の乗った寒ブリが冷めて固くなってしまうのでまずは「パクチータルタル」から仕込みます。1.「パクチー」は葉の部分を茎からちぎって、まとめておきます。後ほど葉の部分を「マヨネーズ」と一緒にブレンダーにかけます。
茎を一緒に回すと水分が多いので水っぽいタルタルになってしまいます。この料理には葉の部分だけを使い、茎は茎でまた別の料理に使いましょう。みじん切りにして「納豆」に混ぜたり「ねぎ塩レモン」に混ぜたり、蕎麦やうどんの薬味にしても美味しいです。
2.「ゆで卵」は殻からむいてエッグスライサーにかけます。まずは横向きにスライスして、その後で90度回転させ、縦にも刃を入れます。3mm角の状態になったと思います。こちらは最後にマヨネーズに合わせますので、器に取り分けておいてください。3.「コルニッション」(ピクルス)はカットした卵と同じ大きさに仕上げたいです。包丁で均等にスライスして、スライスをさらにせん切りにします。最後にサイの目にカットしてください。水気が出るようならペーパーでオフしておきます。
4.「ケイパー」も軽くカットします。元々が小さいので約半分の大きさに。こちらも水分を含んでいますので水気をしっかりきっておいてください。
5.先ほどスライスした「赤玉ネギ」もみじん切りにして、一度ペーパーに包み、軽く絞ります。
6.それではカットした材料合わせて行きましょう。まずはベースの「パクチーマヨネーズ」を作ります。ブレンダーを用意して、少し深めの容器に「マヨネーズ」と「パクチー」の葉を入れ、ブレンダーをかけます。あらかじめ「マヨネーズ」の計量をこの時点で使う容器で用意しておくと便利です。おそらくブレンダーを4、5回上下させる程度で滑らかに混ざり合うと思います。
7.「パクチーマヨネーズ」が仕上がったら、そこにタルタルの全ての材料を投入し、優しくそしてしっかりと混ぜ合わせます。合わされば「パクチータルタルソース」は完成です。
<「タルタルソース」のポイント>
・材料を同じ大きさにカットする
あえて大きさを変えることで、食材が余韻として口に残る順番で印象を伝えるテクニックもありますが、大きさが揃うことによって、食感にも喉越しにも統一感が出るので、全体としてまとまり完成度が上がります。つまり単体の素材ではなく「複合的な素材の融合」を感じることができるため「ソース」たる所以が醸し出されると思います。・「マヨネーズ」だけでは塩味が足りない
そもそもソースと言うくらいなので「何かにかけて味を決めるもの」であるのですが、具材も多いのでそれ自体の味が薄くなってしまいがちです。特に塩味が薄いと料理全体がぼやけた印象になってしまいます。めりめりのある香り、メリハリのある味が「美味しい!」というインパクトを残すので、ソースの仕上げにしっかりと味見をして調整してみましょう。・卵は「固茹で」がベスト
黄身が半熟すぎると、味が薄くなりやすいですし、黄身の色がソースに混ざってしまいます。また固茹での方が冷ました時に卵の香りがよく出ます。プリッとした食感も得られるためにあえて今回は固茹でにして美味しいソースに仕上げます。8.「パネした寒ブリ」をパン粉焼きにして行きます。オリーブオイルを鍋に入れ、中火にかけます。温度が上がる前にニンニクを入れてください。高温の状態でニンニクを入れると、オリーブオイルに香りが移る前にニンニクが焦げてしまいます。あくまでゆっくり香り付けを。程よく色づいてきたら器に取り出し、軽く塩を振ってください。後で一緒にサラダに盛り付けます。このニンニクがとても美味しいんです。
程よく色づいたニンニク。
9.いよいよ「ニンニク」を取り出したオリーブオイルに「パネした寒ブリ」を投入。「オリーブオイル」は温度が上がりやすいので、弱火からスタートしてください。「寒ブリ」からシュワシュワと泡が出ていればOKです。途中で裏側の焼き色を確認しつつ、狐色が確認できたら反転です。
身の厚いところはフライパンを傾けて、オイルを寄せて浸るようにしてあげてください。火の通りが早いので「焼きすぎ注意」です。この時期の「寒ブリ」はとても脂が乗っているので、パサつくことはありませんが、やはり少しでもしっとりと仕上げたいので、外側が狐色になったところが上げ時のサインでしょうか。余熱で火が入ることを考慮してください。
10.さあ、全ての処理が終わったので、あとはキレイに盛り付けて好きな人と、好きな音楽をかけて、ワインを開けましょう。■冷えた辛口のプロヴァンス・ロゼを
下準備さえしておけば「タルタルソースを和える」「寒ブリを焼く」「盛り付ける」の3工程でできてしまいます。そしてパーツが多いのでIKEAの「ご機嫌タッパー」があると大変便利です。盛り付けのポイントは「考えすぎない」「立体感を出す」「寒ブリの断面をいくつか見せる」「色を散らす」「全面を使う」こんなところでしょうか。
季節はまだまだ初夏には早すぎますが、日当たりの良い日曜日の室内は程よく冷えた辛口のプロヴァンス・ロゼにぴったりです。こんな時におすすめなのは「ロムラード キュヴェ・マリー・クリスティーヌ プロヴァンス ロゼ」。
ゆっくりとまったりと休日のお日様と大切な人との時間をお楽しみください。
「ロムラード キュヴェ・マリー・クリスティーヌ プロヴァンス ロゼ」とともに。
チルタイムをニソワーズで…
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