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横顔作家・岡美里さんのために選んだ一冊とは/木村綾子の『あなたに効く本、処方します。』

 

なぜだろう(笑)」
岡「『日日雑記』って、タイトルがまさに生活を言い表していますね。たしかに、なぜ(笑)」
木村「ちょっと、思うままに話してみますね。これは、『富士日記』『犬が星見た』などで知られる武田百合子さんの遺作となったエッセイ集です。《起きて外見る。人の姿車の影なし。また眠る。起きて外見る。人の姿車の影なし。また眠る。》っていう冒頭のリフレインが、その先に綴られていく内容を予兆しているかのように、『日日雑記』には、晩年の百合子さんの生活がつまびらかに記録されています」
岡「わぁ、新聞の折込広告の文面まで正確に記されてますね。銀座、代々木公園、新宿伊勢丹、歌舞伎座。観た映画のタイトルや食堂の品書き、市場に並ぶモノの値段まで…。固有名詞と情報量がすごいですね」
木村「そうなんです。武田百合子さんという人は「眼の人」だと私は思っていて、そのまなざしの鋭敏で精確で、対象に媚びないところに私はすっかり魅了されています。ただ、どんな因果か、晩年には視力を失っていってしまうんです」
岡「これが遺作ということは、この本の中にも、徐々に視力を失っていく様子が描かれるんですか?」
木村「感情的に綴られることはないんですが、見たものの羅列のあとに、「眼がよくなりますように」という言葉が祈りのように置かれるシーンとかはあって、胸を突かれてしまいます。ここに綴られているのは完全に彼女の生活なんですが、「生活感」は感じなくて。なんでだろう、ってずっと考えていたんですが、もしかしたらこの作品は、死期を悟った彼女が、「目に見えるものに別れを告げていく、その覚悟の記録」として残したものでもあったからなのかもしれません」
岡「私、死ぬより恐ろしいことって目が見えなくなることだと思ってるんです。いま木村さんの解釈を聞いていて、つくづく、私は生きている限り多くのものを見たい人間なんだなって実感しました。武田百合子さんが最後に見たものの記録、覚悟して読みたいと思います」

対談を終えて。

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2021年3月9日今日の献立

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